第9回北海道大学−ソウル大学ジョイント・シンポジウムが,1月24日(水)〜26日(金),2月1日(木)〜4日(日),2月23日(金),24日(土)の期間,本学及び北海道厚生年金会館を会場として開催されました。
本学とソウル大学は,1997年に大学間交流協定を締結し,これを記念して1998年に第1回合同シンポジウムを札幌で開催して以来,毎年交互に当番校となって合同シンポジウムを開催しており,今回で9回目となりました。
「持続可能な発展と大学」を全体会のテーマとして基調講演が行われたほか,理学,医学,工学,低温科学,地球環境科学,学生交流,教育学,数学の分野において分科会が開催され,これまでの研究成果発表や情報交換,大学院学生による研究交流セッションなどが行われました。
1月25日(木)に北海道厚生年金会館で催された全体会では,中村睦男総長のあいさつ,Jang Moo Leeソウル大学総長の特別講演に続いて,本学「持続可能な開発」国際戦略本部グローバルマネージャーの本堂武夫教授による「How
to Share Scientific Understandings on Sustainable Development」及びソウル大学大学院環境科学研究科のJung
Wk Kim教授による「The Environmental Impact of Industrialization in East
Asia and Strategies toward Sustainable Development」と題する基調講演が行われました。
今回のシンポジウムは,過去最多である11テーマの分科会が開催され,専門的研究内容等の発表・情報交換が行われ,本学から約420名,ソウル大学から過去最高となる総勢128名の参加があったほか,韓国の他大学(西江大学,忠北大学,基礎科学資源研究所,尚志大学,公州大学,東義大学,中央大学),ロンドン大学,ヘルシンキ工科大学,東北大学からも計18名の参加がありました。このことからも,ソウル大学との交流が,本学の協定校の中で最も活発な大学間交流の一つとして確実に深まっており,また,他大学をも巻き込んだ交流に発展しつつあることがうかがえます。
本シンポジウムも9回目を迎え,交流の量・質ともに充実した内容となったことにより,これまで以上に両校の教育・研究交流の幅が広がり,協力関係がますます発展することが期待されます。
本学21世紀COE「トポロジー理工学の創成」では,韓国の研究教育プログラム“ブレイン・チーム21”に採択されているソウル大学物理学専攻のPark教授らを招聘(しょうへい)し,1月25(木),26(金)の両日,学術交流会館において,「低次元電子系における量子現象」に関する分科会を開催しました。
本COEのリーダーを務める丹田からの韓国語を交えたユーモア溢(あふ)れる挨拶(あいさつ)に続いて,Park教授による講演「Tunnelling
Conduction of Charged Solitons in Polyacetylene Nanofibers and the
Device Applicability of Carbon based Nanostructures」や,常田による講演「Gate-controlled
Superconductivity in Diffusive Multiwalled Carbon Nanotube」があり,ナノ物質における興味深い量子現象が紹介されました。その後の講演を含め計12件(本学7件,ソウル大学3件,ヘルシンキ工科大学1件,東北大学1件)の講演が行われましたが,これらの講演では,ソリトン伝導,電荷密度波伝導,高温超伝導などの低次元電子系における特異な量子現象とその応用に関する最近のホットな問題が活発に議論されました。
理学研究院生命理学部門の河野,先端生命科学研究院の出村教授,ソウル大学College
of PharmacyのBJ Lee教授の3人がオーガナイザーとなって表題の分科会を1月25日(木)午後から26日(金)夕刻まで理学部5号館で開催しました。25日(木)は「たんぱく質のNMR」のセッションがあり,韓国からはBJ
Lee教授と3人のソウル大学大学院生が講演しました。本学からは理学研究院化学部門の石森浩一郎教授と同研究室の大学院生1人が講演しました。この日夕刻は全体会に全員で参加し,懇親会では交流を深めました。
分科会「たんぱく質の形と働き」の参加者
翌日は朝からまずNMRのセッションの続きがあり,韓国からは基礎科学支援研究所のYH Jeon博士,本学からは先端生命科学研究院の神谷昌克助手と相沢智康助手,大学院生1人が講演を行いました。お昼には昼食をとりながらポスターセッションを行い,ソウル大学大学院生1名と本学大学院生および学部4年生24名がポスター発表を行いました。午後は「たんぱく質のX線結晶解析」のセッションから始まり,忠北大学校工科大学のSJ
Lee教授とPD1名,大学院生1名,本学からは先端生命科学研究院田中勲研究室の大学院生2名が講演しました。続いて「たんぱく質の折れ畳みとアミロイド形成」のセッションではソウル大学Department
of ChemistryのSeok教授,富山大薬学部の水口峰之助教授,本学理学研究科大学院生1名が講演しました。最後のセッション「ロドプシンの化学」では西江大学のKH
Jung教授と本学薬学研究院の奈良敏文助手,理学研究科大学院生1名が講演しました。
国際交流と口頭発表を若手教員と大学院生に経験させることができ,大学院教育の実質化に貢献できたと信じています。
○分科会5「第2回SNU-HU 機械工学と宇宙工学シンポジウム」
工学研究科 教授 成田 吉弘
全体会の翌日1月26日(金)午前9時から,機械系3専攻は工学研究科の3室を使い分科会を行いました。はじめに全員が集まり,学科長である藤田修教授とW.I.
Lee教授による挨拶の後,藤川重雄教授の基調講演「Paradigm Shifts of Fluid Mechanics in a
Vapor-Liquid System」,続いてJ.Y. Yoo教授による「Real-time Quantitative Study
of 3D Motility of Adherent and Swimming Cells」がありました。その後は2つのセッションに分かれて,固体力学・材料系は鍵和田忠男教授の車輪ボルトの押付け力測定,Y.
Kim教授のフライトコントロールシステムなど計9件の講演,流体・燃焼系では山田雅彦助教授の応力下物質内の熱輸送問題,Chung教授の本学との共同研究成果など9件の専門講演が行われました。
地球環境科学院・地球環境科学研究院は,ソウル大学環境大学院と,1月26日(金)午前9時から16時まで地球環境講堂において,上記分科会を行いました。会では,先(ま)ず池田研究院長による21世紀COE生態地球圏システム劇変の予測と回避,K
R Kim教授によるBrain Korea 21 (BK21)の紹介がありました。その後の研究発表では,15分の発表,5分の質疑応答時間を設定し,双方のRA・大学院生が,それぞれの研究テーマを口頭発表しました。ソウル大学からは4名,本学からは8名が口頭発表しましたが,その内容は,大気化学,陸域物質循環,海洋生態系など広範囲に渡りました。この点,もう少しテーマを絞る必要があったかと思います。本分科会は,日本語で発表した経験はあっても,英語で口頭発表したことのない学生にとっては,貴重な機会となったようです。大学院生の何人かは,分科会終了後,研究室に戻りビデオ撮影された自分の発表を熱心に見ていました。
また,昼食会後,地球環境玄関前で集合写真を撮りましたが,この頃(ころ)になると院生もお互いに打ち解けて,積極的に発表内容などについて議論を試みていました。こうした機会が,若手研究者を育てるものと確信しました。分科会の終わりではKuh
Kim教授による全体の取りまとめがあり,今後についても議論しました。今回の学生主体の分科会を高く評価し,今後も学生が主体となった会を開催することで一致しました。